Plurality book: chapter outline
This is the latter part of collbaorative authoring book invitation sent from Audrey Tang and Glen Weyl. The former part is translated and available, but not the latter part. Japanese translation under review (source: RadicalxChange Plurality book invitation) Plurality book の協働著作の案内として公開されている日本語訳の後続にあたる部分の日本語翻訳です。
チャプターアウトライン
以下は、章ごとに分けられた素案です。各章にはおおよそのページ数を記載し、該当する章を、5ページにつき1文程度の割合で要約しました。なお、これらは全て初稿です。
I. 序文:多元性を見据えて(5ページ)
この本の冒頭は、現実のあらゆるスケールにおける多元性の遍在と、それらの技術的な未来への拡張がどのようなものか、詩的に思いめぐらします。
II. 初めに:デモクラシーとテクノロジーの戦争(10ページ)
メディアを騒がせているような民主主義と技術の対立は、テクノロジーが発展してきた方向性と民主主義社会の原則の間にある深い緊張を映し出すと同時に隠しています。AIおよびWeb3の流れから生まれた特定の技術には大きな可能性があるものの、それらは技術というよりも根本的に反民主主義的な政治的イデオロギーであり、AIから派生した技術は権力の集中に、Web3から生まれた技術は極端な個人主義に、それぞれ加担しています。
III. 多元主義
1. 多元的な世界に生きる。(15ページ)
物理的に最も小さなレベルの量子論から、最も大きなものまで、「美しさ、成長、進歩 – これらすべては、異なるもの同士の結合から生まれるのです。(*スタートレックより引用)」したがってこれらを実現するには、多様性を維持・増殖させながら、差異を超えたコミュニケーションと協力を強化することが必要不可欠です。情報通信技術は、社会的関係のダイナミックな状況を可視化し、そのようなネットワークにまたがる新しいつながりや組織を促進することができます。
*劇中に登場するヴァルカン哲学の基本思想である、IDIC(Infinite Diversity in Infinite Combinations)を体現した言葉。
2. 失われたDao(道)(15ページ)
ネットワーク社会という考えは、そこでは個人と社会集団がお互いに動的に交差する場所として存在するというものですが、これはヘンリー・ジョージ、ゲオルク・ジンメル、ジョン・デューイといった社会学者、経済学者、哲学者の理論に端を発します。このビジョンは、後にインターネットとなるものの基礎となったものの、哲学的に明確に表現されることはなく、人間の知性の模倣や社会のしがらみからの個人の解放に焦点を当てた他の哲学によって忘れられ、取って代わられることになりました。この本の目的は、その失われたビジョンを蘇らせ、その成功とこれからの発展の道筋を示すことです。
3. 玉山からの眺め(20ページ)
台湾はユーラシアとアメリカの大陸プレートの境界に位置し、また、中国の中央集権的なAI思想、アメリカの超資本主義思想、そして、ヨーロッパの、価値に基づいて規制を行う国家の思想的な交点に位置しています。プレートの断層線が台湾の最高峰、玉山の標高を押し上げたように、それらのイデオロギーの対立も台湾を多元的に成長させていき、台湾を世界で最も技術的に進化し、かつ最も能動的に民主的な国にしました。大臣や、市民活動家、普通のデジタル離れした市民、そしてビジネスパーソンなど、台湾のデジタル民主主義における生活を、この章では複数の視点から生き生きと情感豊かに描いていきます。また、台湾のデジタル民主主義がどのように生まれたかの歴史を簡単に記し、今日の他の自由民主主義国の状況との類似点と対比点を示します。
IV. 自由
1. OSとしての人権 (5ページ)
産業民主主義が基本的人権の原則の上に成り立っているように、デジタル民主主義もデジタル領域における基本的人権の擁護に依存しています。しかし、この機能へのアクセスは制限され、私有されているため、多元主義の可能性が損なわれています。このセクションの各章はこの権利の実現によって可能となる関わり合いの簡単な概略から始まります。
2. 人格(10ページ)
生存権、移動の自由、人として認められる権利は最も基本的な人権ですが、これらをオンラインで可能にするIDシステムは、少数の商用プラットフォームに牛耳られています。 現在、web3空間から生まれつつある分散型かつ多元的なIDシステムは、さまざまな新しい機能を与えます。それらは、インターネットが以前のコミュニケーション様式をはるか先まで連れて行ったのと同様に、今度はインターネットを現在の状態から大きく進歩させる可能性があります。
3. 団体 共同体(10 pages)
ソーシャルネットワークはデジタル時代の共同体を図式化し、ブロックチェーンはデジタル時代の公共広場に相当するものを提供します。 公益的な投資によってこれらを拡張し、そこを伝わる評判や社会的関係を豊かにできれば、社会的関係の範囲を今日よりもはるかに広げ、従来は匿名の市場交換が担っていた機能の多くを置き換える可能性があります。
4. 商業(5 pages)
正規の機関(中央銀行、政府、銀行など)も参加するならば、デジタル通貨は、主権とプライバシーの利点と国際的な相互運用性の両方を可能にするネットワーク構造を持つことができ、その結果、暗号通貨の混乱からも、決済を支配している非効率な独占企業からも、決済システムを解放することができます。
5. 資産(10 pages)
デジタル世界の基本的な資産(データ、計算、メモリ)は分散して生成されますが、それらを安全に共有するためのオープンスタンダードがないため、一部の大手テック企業に力が集中しています。公共投資によってこれらの分野で安全な共有のオープンスタンダードを開発すれば、市民社会と企業グループは、より高い信頼性、プライバシー、主権を持って、より効率的に、はるかに野心的なコラボレーションができます。
6. 教育とアクセス(5 pages)
オンライン人権は、サイバースペースにアクセスし、操作することができる人にしか価値がありません。したがって、高速回線へのアクセスやデジタルコンピテンス(リテラシーだけではありません)の教育は基本的人権でなくてはなりません。
IV. 民主主義
1. アプリケーションとしての民主主義(10ページ)
民主的な制度は、これらの基盤の上で実行できるアプリケーションであり、熟議、妥協、多元主義という3つの基本的な要素を備えています。これらの制度は、公共部門だけでなく、民間部門も変革し、ビジネスを民主化し、そのような資金調達モデルを利用することができます。各章では、デジタル民主主義を実現するためにテクノロジーが今日においてどのように利用されているかを紹介することから始まります。
2. 熟議(5ページ)
(しばしば AI に関連する)統計学の進歩は、何百万人もの人々が、仲間の市民の意見の分布を抽出したものを聞くことができる「ブロードリスニング」という技術を可能にし、民主的熟議に大規模に力を与えます。
3. 妥協(5ページ)
(しばしば web3 に関連する)メカニズムデザインの発展は大規模な妥協と駆け引きを可能にし、直接民主主義を多数派の専制の罠から救います。
4. 多元主義(5ページ)
ソーシャルネットワークは、社会の断絶や分裂を追跡することを可能にし、ローカルなコミュニティの自己統治力を高めると同時に、分裂を解消するインセンティブを生み出すことを可能にします。
5. ファイナンス(5ページ)
web3コミュニティから生まれた新しい社会組織の形態は、民主的なサービスを大規模に提供できる新しいソーシャルセクターを生み出すことで、市場・国家の対立を超越することを可能にします。
VI. インパクト(導入5ページ)
民主主義は重要な地球規模の課題を解決できていないという悪い評判が世界中で立っています。これは、民主主義がテクノロジーに追いついていないためであり、追いついたとき権威主義体制を凌駕できることを台湾の経験が示しています。各章では、統計を示して、台湾やエストニアなど、デジタル民主主義を現実のものにした国々では実現可能になっている成功例を描きます。
1. メディア(5ページ)
誤報は、意外な合意を得たコンテンツを表示するアルゴリズムと、ユーモアを活用する市民社会団体の積極的な参加によって、活発な言論を維持しながら抑制することができます。
2. ヘルスケア(5ページ)
市民社会が希少な衛生物資を配分し、感染の経路を標的とするシステムを迅速に設計できれば、パンデミックやその他の公衆衛生危機を敏捷かつ最小限の経済コストで特定し、対応することができます。
3. 環境(5ページ)
市民が水平型の「データ連合」を形成し、政府に責任を果たすよう交渉し、一般の人たちにも同じことをさせることができれば、地域から地球規模まで、環境被害はプライバシーを侵害することなく迅速に特定することが可能です。
4. 職業(5ページ)
デジタル技術を、人間を置き換えるためではなく、人間の関与のために利用するよう制御することで、デジタル技術は、それらが不要にしてしまう仕事より、もっと良い仕事を生み出すことができ、これは当然広く共有された繁栄と参加につながります。
VII. これからに向けて
1. 制度(20ページ)
多元性を実現するために必要な大規模な投資は、様々なセクターや国からの資金源を融合し、国益、利益、慈善といった動機を越えて行う必要があります。また、各地域の多様なコミュニティでの実験は、台湾のようなデジタル大臣のネットワークを活用した国際的な規模の標準化に密接に結びつけられる必要があります。民間企業、学術機関、慈善団体、活動家のすべてが、オープンスタンダードの未来に貢献することで得られる名声とビジョンに誘われ、貢献することになるはずです。野心的ですが、この計画は、高等研究計画局(ARPANET)が資金提供した研究所のネットワークによって触発されたインターネットの歴史を、現在の多極化した世界へと大きく拡張するものです。
2. 行動(10ページ)
この成功には最高レベルの連携が必要ですが、これを可能にする機運を盛り上げるには、市民一人ひとりにも果たすべき役割があります。。私たちは、ハッカー、投資家、ビジネスマン、活動家、アーティスト、有権者のすべてが、道具に支配されるのではなく、道具を私たちのために使うための運動にどのように参加できるかを示していきます。
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